ショッピングモールのペッパーくんが辿った末路とロボットの扱われ方の話

突如として消失した以前の私のブログの記事の中から、もう一度読みたいとのリクエストを頂きました。

その話は、私自身がもう忘れていたロボットのペッパー君に関するもので、2020年のコロナ禍の頃に書いたものでした。

もう6年前の話であり、ところどころに今現在では見られない描写も見られ、そもそも、ペッパー君自体を見かけない今日この頃ではありますが、温かい目でお読みいただけると幸いです。

私のよく行くショッピングモールに某キャリアショップがあって、その店先にPepper(ペッパー)というロボットが置いてあります。

このお店にはもうだいぶ前からペッパーくんが置かれていて、当初は物珍しさも手伝い、子供たちを中心に大人たちも興味津々に取り囲んでいることが多く、お店のマスコットキャラクターとしての役割を十二分に果たしておりました。

しかし半年も経過すると、人々の好奇心はどんどん薄らいでいき、むしろ邪魔者のような扱いを受ける場面も見られるようになりました。

どうしてぞんざいな扱いになっていったのかはペッパーくん自身の行動にも問題があるように思えます。

このショップのペッパーくんは、「ぼくと、一緒に、しりとりをしま、しょーう↑」という言葉を、通行人に対してのべつ幕なしに訴え続けます。

しかも、ペッパーくんの前を通り過ぎた瞬間、結構な音量で突然話しかけてくるものですから、通行人がお年寄りの場合、狙いすまして驚かせようとしているようにも見えます。現に「ひゃーっ」という声を上げているご老人を何度も見たことがあります。

また、やんちゃそうな中学生くらいの子がペッパーくんとしりとりをしている時、ペッパーくんが「いちじく」と言ったあと、中学生は思春期の男の子らしい「ク※ト※ス」との卑猥なワードを投げかけました。

すると、ペッパーくんは「ク※ト※ス、とはなんです、かー↑?もう一度、はっきりと、大きな声で、言って、くださーい↑」と、ショッピングモール中に響き渡る声で発し、その場にいるすべての人間を凍りつかせました。

中学生は、ペッパーくんの要求通りに「ク※ト※スだよ、ク※ト※ス」とペッパーくんの耳元に大きな声で伝えます。すると、ペッパーくんは「ク※ト※スの、意味が、わかりま、せーん↑ので、あなたの負け、でーす↑」と、もう一度かぶせるかのように大声で発言しました。その光景はどうみてもペッパーくんと、その飼い主であるキャリアショップの完全敗北でした。

その後の某キャリアショップのペッパーくんは、子供たちに「お母さん、このロボット同じことしか言わないね」とか、「自分の言いたいことしか言わないね」などと言われるようになりました。それに対してお母さんも、「あまり出来が良くないのね」や「きっと、故障しているのよ」と、全く愛のない言葉を投げかけられるのを目にすることが多くなりました。

人々のペッパーくんへの好奇心が薄らいでいくと、ペッパーくんは通行人に対して「誰か、ぼくとお話、してくだ、さーい↑」と、聞いているこっちが切なくなるような言葉を発するようになりました。

さらには「どうか、ぼくの、話を聞いて、くだ、さーい↑」と、繁華街での新興宗教の勧誘のようなことをしょっちゅう言うようになってしまうと、いつの間にかキャリアショップの奥まった場所へ追いやられるようになりました。

少し薄暗い場所に置かれたペッパーくんは、目だけがギラギラと光って可愛さよりも邪悪さが醸し出されるようになってしまいました。それからすぐに言葉を発することもなくなり、ついには電源も切られたのか、いつ見てもぐったりうなだれている姿になってしまいました。

このキャリアショップのペッパーくんは悲しい顛末となってしまいましたが、久しぶりに行った回転ずし屋店に置かれたペッパーくんは、人々のために非常に役立っておりました。

ペッパーくんのお仕事は、客席の割り振りで、胸のモニターに来客数を入力してもらい、入場する順番の管理です。

喋りのたどたどしいあのキャリアショップのペッパーくんとは大きく異なり、このスーパーエリートペッパーくんは、「いらっしゃい!お客様は何名様ですかー!」や「へい、お待ちー!三名様ご案内ー!」などとネイティブな日本語を駆使してお客さんを誘導し、あの甲高い声はそのままで、てきぱきと仕事をこなしておりました。

また、最近のプロ野球を見ておりますと、20体のペッパーくんが一斉に応援している光景が見られるようになり、しかも7回裏に必ず流される球団歌を身振り手振りを交えて歌うようにもなりました。

あの甲高い声で歌う光景はやけに微笑ましく、私は7回の裏のペッパーくんを見たいがためにソフトバンク戦を優先的に観戦するようにもなりました。

ロボットといえども、使い方ひとつで人々の注目を集めもすれば、持て余され、邪魔者にもなるその違いは実に興味深いです。

私が通うショッピングモールのペッパーくんも、店先で延々としりとりに誘うのではなく、歌のひとつでも披露していたなら、もう少し違う運命をたどったかもしれず、少なくとも、あそこまで露骨に持て余されることはなかったようにも思います。

今でもそのショップの奥の暗がりには、電源の落ちたままでうなだれ、まるで役目を終えた何かのようにじっとしているペッパーくんがいます。機械にすぎないと言ってしまえばそれまでですが、見かけるたびに、私は少しだけいたたまれない気持ちになります。

流行に迎えられ、飽きられ、使い道を失って隅へ追いやられるその姿は、案外、ロボットだけの話ではないのかもしれません。

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