680円のTシャツはなぜ成立するのか? SHEINを通して見えた超低価格衣料の現実

アリエクを長年買い続けていると、価格に麻痺をしている部分があるのですが、SHEIN(シーイン)を眺めていると結構な驚きがあります。

見た目も質も悪くは見えないTシャツが680円。それも日本国内まで送料無料で販売されていて、なぜこの価格で採算が合うのだろうと思ってしまうのです。Tシャツに限らず、様々な衣料品がアリエクユーザーから見ても、どれもかなりの安さで販売されているのです。

SHEINの驚異的な低価格は、単なる安売りをしているだけでは説明がつきません。まあ、アリエクの商品でも説明のつかない価格は数多く存在していますが、安売りの原動力というか、安く売るための秘密がなければ、この価格ではやっていられないはずです。

安いと喜び笑う声の裏側には、きっと泣いて恨む声があるはずです。その声は日本で買うユーザーには聞こえてこないので、そこの部分を調べたくなりました。

BBCやWIREDなど、主に海外で報じられていた調査報道をもとに、SHEINを一つの具体例として、中国の衣料品製造の現場で何が起きているのかを整理しました。ただし、これから書くことは、アリエクやSHEINを断罪するような性質は一切ありません。

なによりも、日々アリエクで安物を漁って喜んでいる私の行為は、こういう部分があるから成り立っているのですから、それにケチをつける真似なんて、できるわけがありません。

まずは、BBCが報じたSHEIN格安ワンピースの舞台裏 成功を動かす工場をBBCが取材という記事から抜粋してみます。

BBCの中国特派員ローラ・ビッカーは、広州・番禺区の「SHEIN村」と呼ばれる工場街を取材しました。

10の工場を訪問し、4人の工場オーナー、20人以上の労働者に聞き取りを行い、その調査で得られた証言をまとめたのが以下の表になります。

項目 BBCが報じた実態 参考となる基準 補足
週労働時間 約75時間 中国労働法上の標準労働時間は週44時間 法定基準を大きく上回る長時間労働
休日 月1日だけというケースが多い 原則として少なくとも週1日の休息が必要 休息日が極端に少ない実態が示されている
賃金体系 出来高制、Tシャツ1枚1〜2元(約20〜40円) 地域最低賃金や残業規制とは別に評価が必要 単価が低く、労働量に強く依存する構造
基本給 約2400元(約5万円) 広州の最低賃金水準に近い 生活賃金とは差がある可能性
月収 残業込みで4000〜10000元(約8〜21万円) 長時間労働に依存しない収入設計が望ましい 残業を前提に収入を確保する構造

ある49歳の女性従業員はこう証言しています。「1ヶ月が31日なら、31日間働く」 また別の労働者は、Tシャツ1枚を縫うごとに1〜2元(24円~48円)の出来高制で、1時間に十数枚を縫うと語っています。

工場オーナーの声も印象的で、「SHEINへの供給は利益が薄い。でもSHEINは期日通りに代金を支払う。だから信用できる」この一言には、中国の衣料品製造が抱える現実が凝縮されています。

利益率は低い。それでも、安定した発注と確実な支払いがある取引先は手放しにくい。工場側もまた、厳しい条件の中で生き残りを図っているのです。

2024年11月にWIREDは、中国のギグワーカーたちが投稿動画で暴露するその実態にて、中国の複数のプラットフォームに投稿された30本以上の動画を分析し、倉庫作業員の実態を報じています。

そこから見えてくるのは、超低価格衣料を支えるのは商品を作る現場だけでなく、それを仕分けし、梱包し、発送する物流現場も同様のようです。記事にはこのような証言が紹介されています。

  • ある倉庫労働者は、トイレ休憩を取らずに650着の衣類をピックアップしたと語り、月1万元前後の収入目標を達成したいと話している
  • 11時間半のシフトを終えた後、左手が上がらなくなったと訴える女性労働者の動画もある
  • その動画には「物流業界で働いたのは初めてでしたが、二度と働くつもりはありません」といった趣旨の言葉が添えられていた

こうした証言は、超低価格衣料のスピードと安さが、物流現場の高負荷によっても支えられていることを示しています。

中国の超低価格衣料を特徴づけるのが、小ロット・多品種・高速回転の生産モデルです。

SHEINでは、毎日大量の新商品が掲載され、初期発注は100〜200着程度の小ロットに抑え、売れれば追加生産をかけます。この仕組みは在庫リスクを抑える一方で、工場や労働者には絶えず変動する需要への対応を求められます。

データに基づき、売れ行きを見ながら追加発注をかけるのは効率的ではあるものの、それを製造する側からしてみると、「いつ、どれだけ、どのスピードで作るか」が不安定です。「突然作れ、早く、すぐに」と急かされる事態になり、結果的に労働者の長時間労働にも繋がるのだと思います。

ここで書いていることは、「悪い企業が労働者を苦しめている」といった、単純な話ではありません。

労働者の賃金は、多く働けば多く稼げる仕組みにはなっていて、現にこれを良しとしている人々も少なくありません。ただし、急かされて製造する場合には賃金に反映されますが、逆に売れなければ製造することはできなくなり、収入が激減する不安定さも抱えているのです。

この構造は、労働者だけでなく工場主にも同様で、不安定な受注と薄利でもなんとか回し続けなければ生き残れないのです。

報じられているのがSHEINの衣料品なので、SHEINで話を進めましたが、この構図はアリエクの安物商品でもあまり変わりがないと思います。

製造コストで最も大きなウエイトを占めるのが人件費であり、アリエクやSHEINの安さの源は、その人件費を削って実現している部分が今回参照した報道から見えてきます。だからといって、アリエクやSHEINで買わないほうが良いという話ではないのです。もし買わなくなったら、製造現場に全てしわ寄せがきて、最悪の結末になるのですから。

需要があるから供給する人々が生きられるのか、供給する人々がいるから需要が生まれるのか。これはどちらが先なのか答えを導けません。ただ、安さの源は人間の労働力であり、そこに携わる人々は、安さに群がって購入するユーザーがいなければ、すぐに破綻してしまうという難しい構図も見えてきました。

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Q

Q. SHEINが安い理由は何ですか?

A. SHEINの安さは、単なる安売りではなく、小ロット・多品種・高速回転の生産モデルと、低い利益率でも回し続ける製造・物流の高負荷構造によって支えられています。初期発注を100〜200着程度に抑え、売れた商品だけを追加生産する仕組みが在庫リスクを減らす一方で、現場には短納期と不安定な需要対応が押し付けられます。

Q

Q. SHEIN村とは何ですか?

A. SHEIN村とは、BBCが取材した広州・番禺区の工場街を指す呼び名です。BBCの中国特派員ローラ・ビッカーは、10の工場を訪れ、4人の工場オーナーと20人以上の労働者に聞き取りを行い、SHEIN向け衣料品を支える長時間労働や出来高制の実態を報じました。

Q

Q. SHEINの工場はどんな労働環境ですか?

A. BBCが報じた実態では、週労働時間は約75時間、休日は月1日だけというケースが多く、出来高制でTシャツ1枚1〜2元という証言もありました。基本給は約2400元、月収は残業込みで4000〜10000元とされ、長時間労働に依存して収入を確保する構造が見えています。

Q

Q. SHEINの物流現場は過酷ですか?

A. 過酷だと報じられています。2024年11月にWIREDは、中国の複数のプラットフォームに投稿された30本以上の動画を分析し、倉庫労働者がトイレ休憩なしで650着をピックアップしたり、11時間半のシフト後に左手が上がらなくなったと訴える動画などを紹介しました。超低価格衣料の安さとスピードは、物流現場の高負荷にも支えられているようです。

Q

Q. AliExpressやSHEINの安さの源は人件費ですか?

A. 製造コストで最も大きなウエイトを占めるのが人件費であり、AliExpressやSHEINの安さの源には、その人件費を削って実現している部分があります。ただし、安さを支えるのは単純な低賃金だけではなく、不安定な受注、薄利、多忙な製造と物流が組み合わさった構造です。