アリエクの開封動画は「iPhoneは盗られる。LEAGOOは誰も盗らないから届く」と語られる国で育まれた

AliExpressでは、「高額商品を買ったら開封動画を撮っておけ」と昔から言われてきました。

これは、商品違い、空箱、配送事故、商品の抜き取りなどの問題が起きたとき、受け取り時に少なくともユーザーの責任でないことを証明するために必要だからです。そして、この開封動画が返金を求める際に大きな証拠になるため、欠かせません。

この開封動画文化の背景には、AliExpress特有の不透明さがあります。

まずは、ユーザー側の事情から見てみます。空箱、空袋、中身違い、数量不足と、AliExpressでは、こうしたトラブルは割と多く、「2個注文したのに1個しか入っていなかった」「中身は空っぽで箱だけが届いた」との話はいくらでもあります。

そして、Open Disputeで返金を求める際、写真、重量、封筒のラベルといった証拠よりも、開封時にそもそも荷物が入っていなかったことを証明する動画を添付した方が簡単に返金されます。アリエクで恐ろしいのは、中身が空っぽであることの証拠を画像のみで提出した場合、返金がなされないことがあるのです。

100円200円の商品で返金されなくてもダメージはありませんが、1万円2万円の商品が届いたら空っぽ、開封動画を撮っていなかったがために返金が却下されたら、どう思われるでしょうか。ユーザーは何の落ち度もないのに、返金がなされないこの状況を。

しかし、これがアリエクでの常識であり、起こり得ることをあらかじめ予測し、面倒でも対策をすることで身を守れるのです。

この開封動画が強力な証拠になるのは、ユーザーだけではありません。実は販売する側のセラーにとっても有力な証拠になるということはあまり知られておりません。ただし、セラーの場合は梱包動画になりますが。

ユーザーが「空箱だった」と主張して返金を求めてくる理由の中には、本当は入っているのに「入っていなかった」と嘘の主張するケースがかなり多いとのこと。特に、Choice商品が増え、返品や返金が簡素化されてからは、返品不要での返金や、部分返金のルールが悪用されることもあるそうです。

そのため、セラー側も発送時の梱包の様子を動画に撮影して、ちゃんと発送したことを証明するための証拠を残すようにしているといいます。これは、ユーザーが届いた荷物に商品が入っていないことを想定して撮影するように、セラーもまた、ちゃんと届かないことを想定して、自らを守る行動をしているのです。

この互いの不信の構図が露骨だったのが、個人的にはロシアだと思います。

戦争もコロナもなかった時代、AliExpressはロシア国内で、最も利用されるECサイトと言われるくらいに普及していて、当時のアリエクはロシア人のためのECサイトとまで呼ばれていました。その一方で、空箱や空袋、中身違いといった話は、ロシア語圏から頻繁に出てくるエピソードでした。

そこで印象的だったのは、「税関なのか、郵便局員なのか、配達員なのか、それとも身内の誰かなのか、盗んだ人間がまったく分からない」という、誰もが泥棒なようなことが平気で書かれていたことです。

購入したものによっては、アリエクで買う→ロシアユーザーへ届くとはすんなりならず、その道中で商品が煙のように消える。しかも、それが誰の仕業なのか分からない、なんてことが頻発していたようです。

これは私自身が当時ロシアのサイトを見ていて実際に目にしたのですが、高い商品、特に中身がスマホやPCだと煙のように消えると、ロシア語圏のユーザーの間で言われていました。

当時、私がロシア語のサイトで、LEAGOOスマホのカスタムROMを探していた時、「iPhoneは間違いなく盗られる。Xiaomiも超高確率。Blackviewなら生存確率が上がる。LEAGOOなら誰も盗らないからちゃんと届く」という書き込みを見て、えらく感心した覚えがあります。

ロシアのアリエクユーザーたちは、どんなに厳重に梱包していても、中身がスマホだと分かれば、必ずどこかで開けられることを知った上で購入し、自宅に届いた荷物には入っていないことを前提で、開封動画を撮影して証拠にする、という文化が花開いたように思います。

ロシアでの開封動画は徹底していて、もしも郵便局で受け取る際には、局員から手渡される以前からちゃんと撮影し、その場で郵便局員に荷物を開けさせ、開封の様子を最初から最後まで撮影するというのです。

どこで荷物が消えるか分からないようなお国柄だからこそ、逆にセラーも発送時に証拠となる梱包動画を撮影し、自らを守るための証拠保全をしているだと分かりました。

セラーの不正、配送途中での抜き取り、通関段階でのトラブル、単純な誤配送、虚偽の申告、可能性はいくらでも考えられます。海外から荷物がやってくるということは、いろいろな人間の手を経由してくるわけで、なかには悪意を持った人間もいるでしょう。

ただ、どこの誰が悪意を持っているのかは分からないから、ユーザーもセラーも、身を守るために証拠となる動画を残しています。

そして、どちらも相手を心から信用しているわけではない、というのも興味深い部分です。あと、ロシア人ユーザーは荷物に関わるすべての人々を信用していない、という部分も。

💰【裏技】Choiceの価格変動を攻略!安いタイミングを見逃すな

🎯単価が半額以下?よりどり限定価格をチェック

このブログの全記事は、こちらのアーカイブ( 全記事一覧)から、ご覧になれます。

今回の話に近いものが下にあります👇

「なんで発送されないんだ!」──買い手のイライラの裏側で、AliExpressセラーも怒りながら罰金に怯えている
AliExpressの発送は、なぜあんなに遅れることがあるのか? 背景にはChoice倉庫の在庫切れや、遅延時に罰金を負うセラー側の厳しい事情があります。買う側は待たされてイライラしますが、裏ではセラーも綱渡りの在庫管理を強いられているのが実情です。発送遅延が起きる仕組みと、ユーザーには見えないセラー側の苦しさを解説。
1000円のスマホケースの裏側。アリエクのセラーは一体いくら儲けているのか?
AliExpressの安すぎるスマホケース、原価とセラーの利益は一体いくらなのか?中国語圏SNSの書き込みを基に、販売価格から手数料、紛争リスクまでを徹底試算しました。利益率10%という驚きの実態と、還付金で食いつなぐ過酷なビジネスモデルであり、加えてユーザーからの返品、返金対応の辛さを解剖します。
パチモノは闇ではなく産業──中国語圏で公開される製造と流通の構造
AliExpressの安さの裏側には、何があるのか? 中国語圏ではコピー品やパチモノが「闇」ではなく一つの産業構造として語られており、華強北を中心に製造や流通の仕組みまで共有されています。高仿・中仿・低仿の違い、OEMや再生部品の実態、アリエクに中仿が多い理由まで、中国通販の安さを支える構造を読み解く記事です。
「Gift」や「Sample」の罠。AliExpressセラーの余計なお世話が引き起こす税関トラブル
AliExpressで購入した荷物のラベルに、勝手に「Gift」や「Sample」と書かれて届いたことはありませんか?実はこれ、販売店の勝手な判断で行われる、お節介なサービスなんです。これが受取人にとっては予期せぬ税関トラブルを招く恐れがあります。なぜ危険なのか、その真相と購入者が知っておくべきリスクを解説します。