
毎年11月11日、いわゆる独身の日は、AliExpress、Temu、Sheinの3社が激突する、世界最大のECが戦場と化す日とも言えます。タオバオやTmallなどの中国国内ECサイトも合わせれば、この日の売上は文字通り大爆発します。
先日、アリエク11.11セールでのセラーたちの苦悩について書きましたが(AliExpress11.11セールの裏側:ユーザーには待ち遠しいセールでも、セラーにとっては地獄)、今回は、商品を供給する製造現場にスポットを当てます。

11.11セールで販売される商品を実際に供給している製造現場や工場側の人々は、毎年11.11が終わったあとに『吃土(※チートゥ)』と口々に言うそうで、これはセラーたちも同じ言葉を発していました。
土を食べて凌ぐ、つまり金を使い果たして、食べられないという意味なのですが、なぜ、爆発的な売り上げを記録する11.11セール終了後、商品を供給する側が食べられなくなるのか?その構造を追ってみます。
この構造の原点は、「全托管(フルマネジメント)」という販売モデルが、工場から価格決定権そのものを奪っていったことにあります(※全托管について詳しくは、こちらのChoiceはなぜ安いのか? AliExpressの裏側にある3つの販売形態と物流の秘密をご参照ください)。

かつてのアリエクは、セラーや製造工場側が自らの考えで販売価格を決めていました。しかし現在は、Temuが始め、Sheinやアリエクも追随した「全托管」というビジネスモデルが主流になりつつあり、セラーや工場は商品を送るだけで、販売、価格設定、物流はすべて運営側が担います。
ここに、11.11セール後、土を食べて凌がなければならない理由があるのです。
製造工場が運営元へ販売する商品の提案すると、運営元は「同じような商品を作っている別の工場」にも見積もりを取らせます。「A工場は1個200元で出すと言っている。お前は190元で出せるか」といった、工場同士を競り落とさせ合うと言われてます。
日本の製造業でもこの手の話はありますが、中国ECサイトの場合、値下げ要求に応じなければ、販売ページに載らないか、検索でほぼ見つからない場所に追いやられ、11.11セールとはいえ全く売れない可能性だってあるのです。値引きをすれば売れるページに掲載してくれるのならとその条件を飲むも、手取りが確実に減るのは明確で、この点が11.11セール後で苦しくなる要因の一つです。

それともう一つ、この構造の上に国内と海外の板挟みという問題が重なります。
11.11セールは、中国国内と海外、両方が同時にピークを迎えますが、中国国内のタオバオやTmallは、発送遅延に対するペナルティが非常に厳しいのです。一方の、TemuやアリエクのChoiceも、倉庫への納期遅れに対して厳しい罰金を科してくるのです。限られた工場の生産ラインと労働者で、この両方の注文を同時に捌くのは、物理的にほぼ不可能です。
結果として、工場の生産体制は「従業員を無理やり残業させて製造する。でも、品質管理まで手が回らない」なんてことも起こってしまいます。しかし、粗悪品を販売した場合、どのECサイトでも返金されるのが当たり前。ユーザーに返金した分の商品代金は、セラーや工場にはビタ一文入ってきませんから、爆発的に売れたのに返品ばかりで代金が入ってこない、なんてことが起こるのです。
そんなことにならないよう、製造工場は11.11に向けて、7月から9月あたりの時点で、革や基板、パッケージといった原材料を、現金で大量に仕入れ、早めに製造を開始します。ただし、その製造している商品が絶対に売れるのかの保証はありません。売れたとしても工場に代金が支払われるのは、ユーザーが受領した後ですから、11.11セールのかなり後なのです。

この図式の恐ろしいところは、まともに製造している工場ほど、販売時には不利になるという、逆転現象が生まれてしまうことです。
真面目に品質管理を行い、適正な利益を確保しながら、持続可能な経営をしようとする工場ほど、運営側の最安値競争の中で弾き出されていきます。
『良い製品=高い・悪い製品=安い』という、この当たり前の図式が成り立たなくなってしまうのが、今の11.11セールの構造なのです。

ユーザーにとって安いのは確かに魅力なのですが、その安さの源が品質管理だとしたら、ちゃんと管理された商品を購入したいのは誰しも同じだと思います。しかし、数あるECサイトの中で安さを強調するための争いから、肝心な部分がおざなりになっている可能性があるのです。
11.11セールは年に一度だけの規模が桁違いに大きなセールであることは間違いありません。ただし、その安さの中にはセラーや製造現場の苦労や悲しみも入り混じる、なかなか切ないものだったりもするのです。
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Q. 11.11セールとは何ですか?
A. 11.11セールは、11月11日の独身の日に行われる大規模セールです。AliExpress、Temu、Sheinに加え、タオバオやTmallなどの中国国内ECサイトも含めて売上が集中し、世界最大級のEC商戦の一つとされています。
Q. 11.11セール終了後に工場が吃土と言うのはなぜですか?
A. 吃土は、金を使い果たして食べられないほど苦しい状態を指す言葉です。11.11セールでは爆発的に売れていても、工場は値下げ競争、納期圧力、返金リスク、原材料の先払い、売上入金の遅れが重なり、セール後に資金繰りが厳しくなりやすいのです。
Q. 全托管とは何ですか?
A. 全托管は、Temuが始め、SheinやAliExpressも追随したフルマネジメント型の販売モデルです。セラーや工場は商品を送るだけで、販売、価格設定、物流は運営側が担います。その結果、工場は価格決定権を失いやすくなります。全托管について詳しくはこちらのChoiceはなぜ安いのか? AliExpressの裏側にある3つの販売形態と物流の秘密もご参照ください。
Q. 11.11セールで工場が値下げ競争になるのはなぜですか?
A. 運営側は、同じような商品を作る複数の工場から見積もりを取り、より安い価格を求めます。値下げ要求に応じなければ、販売ページに載らなかったり、検索で見つかりにくい場所に追いやられたりするため、工場側は手取りが減ると分かっていても条件を飲まざるを得ないのです。
Q. 11.11セールの安さの裏で品質管理がおざなりになることがありますか?
A. あります。11.11セールでは中国国内向けと海外向けの注文が同時に集中し、工場は限られた生産ラインと労働力で両方を捌かなければなりません。その結果、残業で無理に生産を回し、品質管理まで手が回らなくなることがあります。粗悪品として返金されれば、売れたのに代金が入らない事態も起こります。
