「それ、どこで買ったの?」と聞かれ、アリエクスプレスと素直に答えにくい私

あまり近しくない人間に「それ、ちょっといいじゃない。どこで買ったの?」と聞かれると、私の脳内にはコンマ数秒の奇妙な沈黙が流れます。

普通なら「ユニクロだよ」とか「Amazonで適当に」と爽やかに返すべき場面なのでしょう。でも、私の口から出かかっているのは「アリエクスプレス」という、一般社会ではあまり馴染みがなく、説明が少し面倒な文字列なのです。

躊躇してしまう背景には、いくつかの厄介事が隠れているからなのです。

まず、「アリエクスプレス?なんだ、それ」から始まると、そこでもううんざりなのですが、どうにか簡単に説明をします。

その次に起こるのは、「あちらの国のパチモノを、こいつは喜んで買っているのではないか」という疑惑の目です。デザインは洗練されている。機能も申し分ない。しかし、そう言われてみると、どこか怪しげに、買った本人にだって見えてきますから、よその人間ならなおさらでしょう。

笑顔で「安くて最高ですよ!」と手放しで勧めることは、私の倫理観と社会的な体裁から、どうしてもブレーキをかけてしまうのです。

また、アリエクスプレスは運や偶然が割と支配する、お買い物という名の小博打であることから、なかなか他人へお勧めすることができません。

ただ単に「それいいじゃない」と何の気なしに言っただけの、中国通販なんて全く無縁の人間を「アリエクスプレスは信じられないほどに安いです」と誘い込んだとします。

その言葉につられて買った初めての買い物で、商品は発送されずに偽番号、かろうじて発送されて届いたのはゴミ同然の品だった、なんてことになったら、勧めた私が詐欺師同然の扱いを受けるでしょう。

だからこそ、「あ、これ?……ネットの、ちょっとした海外通販です。届くまで結構時間かかるから、あまりお勧めはしませんけどね」と、咄嗟にお茶を濁すのです。

私自身は嘘は決して言ってません。ただ、怪しい中国の巨大倉庫から、薄汚れたビニール封筒で届くことを、ほんの少しだけマイルドに、そして分かりにくく、極力、興味を持たれないようにしただけなのです。

アリエクスプレスでの買い物は、現代のデジタルな宝探しに近いと思います。しかし、その宝探しの楽しさを付き合いの薄い人間に説明するのはやたらと面倒なのです。

手に入れた宝物を他人に自慢したい気持ちと、暗黙の了解として自分だけの秘密にしておきたい気持ちが、あの数秒の沈黙の中で激しくぶつかり合うのです。

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