
現在のAliExpressは物流が飛躍的に進化し、発送から早ければ4日間、長くても2週間以内に届けられます。このシステムになったのは3年ほど前のことでして、それまでのAliExpressの物流は本当に酷いものでした。
以前にもトルコポスト(あの頃、なぜ2カ月も待てたのか? トルコポストという名の地獄)やスウェーデンポスト(あの頃、なぜ一カ月半も待てたのか? スウェーデンポストという名の苦行)の異常な配送日数について書きました。
それ以外にも、トンガポスト、香港ポスト、特にSunYou(順友)は「地獄のSunYou」と恐れられるほど、いつになったら届くのか分からない酷い配送方法が存在しました。

AliExpressの最大の売りは、送料無料なのにとにかく安いことですが、この送料無料を実現するためにSunYouやトンガポストが使われました。
中国を出発した荷物は、トンガ→バヌアツ→台湾→日本というルートを船便で運ばれるため、最低でも1カ月、下手をすると2カ月も待たされるのです。
しかも、ユーザーの元へ荷物が届くまで追跡情報は一度も更新されず、荷物は動いているのか、本当に出荷されているのだろうかと疑心暗鬼のまま、2カ月を過ごすのです。ただし、これは送料無料になるための代償でして、時間と引き換えに安い商品でも送料無料で購入することができたのです。

かつてのSunYouやトンガポストを配送方法にする手法は運営するAliExpressが考えたわけではなく、セラーたちが編み出した手法であることはあまり知られていません。
例えば、先程の中国→トンガ→バヌアツ→台湾→日本の船便コースは、万国郵便連合(UPU)の端末料金ルールを逆手に取った、極限のコスト削減ルートだったのです。UPUのルールでは、開発途上国から先進国へ送る郵便の端末料金が、先進国同士よりも安く設定されていました。そこで、一部の物流業者は以下のような抜け穴を突きました。
中国から、端末料金が極めて安いトンガやバヌアツへまずは大量の荷物を送って、トンガポストやバヌアツポストのラベルに張り替えます。すると、途上国から日本行きのきわめて安い郵便料金となり、台湾を経由して日本へ再送するのです。
目の前の東シナ海を渡ればすぐ日本なのに、南太平洋クルーズのようなルートを手漕ぎボートのようなスピードで日本に届くという、現代の物流とは思えないルートが完成したのです。
しかも運賃が極めて安いため、セラーたちは配送費をケチるために積極的にこういった配送方法を使いました。

ところが、「地獄のSunYou」の時代が急に終焉を迎えました。その幕引きを行ったのは運営元のAliExpressで、物流の決定権をセラーから奪い取ったのです。
送料無料とはいえ、最低1カ月が経過しないと届かない配送方法をユーザーたちがありがたがるはずもなく、むしろ不満の矛先は運営元へ向けられます。
また、追跡情報が更新されないのはやはり問題であり、物流へのテコ入れを進めていたAliExpressは、自社グループのCainiao(菜鳥)を中心とした配送手段を構築しました。
さらに、物流での大転換はAIの導入でした。セラーが好きなように選択していた配送方法をAIが瞬時に決定するシステムを導入しました。AIは、配送コスト・国別の混雑状況・倉庫の処理能力・航空便の空き状況などを瞬時に計算し、最適な配送方法を選ぶのです。だから、セラーがこざかしいことをする必要すらなくなったのです。
それともう一つ、自社倉庫に発送された荷物を一括で集め、それぞれの国々へと出荷するようにもしました。

現在、セラーが注文を受けた瞬間に自動的に配送ラベルを出力し、セラーはラベルを発送する荷物に貼り付けて指定の集荷場や倉庫へ渡すだけ。あとは、運営元の倉庫で仕訳けられ各国へ届けられていくのです。
おそらくセラー自身も、自分の荷物が最終的にどの国の郵便網を経由するかは、追跡情報以外に知る由がないのです。
現在のAliExpressの配送方法でも遅すぎると感じる方は結構いらっしゃると思います。注文から2週間くらいかかることもありますしね。しかし、過去から比べると現在の物流網は奇跡的に早く、それも平均的に早いことは驚異的なのです。
コロナ禍以降のAliExpressで最も変化があったのは物流網に間違いありません。その進化には、セラーの苦心から始まり、その結果、ユーザーは煮え湯を何度も飲まされ、運営元が本腰を入れて対処した過程があります。生みの苦しみという言葉がありますが、現在のAliExpressの迅速な配送網は、この言葉がぴったり合うことを私は目の当たりにしてきました。
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