5年前のコロナ禍初期に起きたアリエクスプレスでのマスク密売の話

新型コロナウイルスは、歴史に残る大きな出来事であったことは間違いありませんが、もう5年も前の事になると、当時の記憶がかなり薄れてくるのも事実であり、喉元過ぎれば熱さを忘れるかのように、コロナの初期ってなにがあったっけ?と思う私がいるのも事実だったりします。

日本国民、というか世界中の人々の全てが突然窮屈な生活を強いられたコロナ騒動でしたが、当時を思い返すため、以前に私がブログで書いていたことを確認してみると、使い捨てマスクが大いに不足していることが頻繁に書かれておりました。

そして、その頃のアリエクスプレスでは商魂たくましいお店がマスクを闇で製造し、密売をしている事例があったと、私は全く覚えていないのですが書いており、当時はかなりのコメントを頂いていたようです。

今回は、手抜きでけっしてないものの、コロナが始まってマスク不足に陥った当時に反響があった記事を転載、加筆させていただき、もう忘れつつある当時の状況と、アリエクスプレスのお店のたくましさを知って頂ければと思っております。

では、2020年3月16日という、日本でもコロナがかなり深刻な問題となり、使い捨てマスクが全く消え、とんでもない価格で転売が横行していた当時に時間の針を戻させていただきます。

日本のマスク不足始まって、もうかれこれどれくらいの期間が経過したのかも忘れてしまうほど、いつまで経ってもマスクを購入することが難しいままです。

開店前のドラッグストアの店頭には毎日のようにマスクを求める行列ができており、政府から景気の良い使い捨てマスクの放出話が出てきても、マスク不足がすぐに解消される見込みが薄いのは日本人の誰もがなんとなくわかっている今日この頃です。

マスクに関する商品の転売が罰則化されたことがいくらかの効果をもたらせそうですが、需要だけが大幅に過多な状態が一向に解消されない現状では、すぐに好転するのはなかなか難しいと思われます。

新型コロナウイルスの震源地である中国も、マスク不足はなかなか解消されていないようですが、日本と中国との大きな違いは、国が強権的にマスクを製造させることができる強大な力があるか否かです。

先日、中国のニュースを見ていると、本来は飛行機を製造している工場で使い捨てマスク製造が始まったとの報道がありました。

なんでも、最新の飛行機製造技術を大いに活用して、1分間にマスクを100枚も製造できる装置を開発してしまったとの事で、飛行機製造の最新技術がどうしてマスク製造に役立つのかが全くの不明ですが、人間、やる気になればなんでもできるんだな、と変に感心してしまいました。

中国では飛行機工場だけではなく、様々な業種の工場で使い捨てマスクの生産が急ピッチで行われているようですが、アリエクスプレスで主にHDMIケーブルを製造販売しているお店すらもマスクを製造するようになったようで、以前、私がHDMIケーブルを購入したお店から突然メッセージが届きました。

そのメッセージには、『親愛なるバイヤー、こんにちは。私たちの会社は現在、大量のマスクを生産しています。 あなたが購入に興味があるなら、私たちは優遇価格で販売します。是非、あなたを助けたい』と書かれておりました。

HDMIケーブル屋さんが作ったマスクが必要なほど私自身はマスクに困っておりませんが、このご時世に一度購入しただけのユーザーへ売り込んでくるのはどういった事なのかを探るべく、「是非、マスクが欲しい。すぐに欲しい」と切羽詰まったようにメッセージを返送しました。

するとお店は、『オーケー、オーケー。あなたのために安く売ってあげる。N95マスクが50枚で200ドル、医療用使い捨てマスクは100枚で150ドルだ』とすぐに返送してきました。

N95マスクとは、一般的な使い捨てマスクではなく、空気感染を防止するためにキメの細かい不織布を織り重ねて製造した、主に医療従事者が装着するタイプのマスクですが、医療用という事を鑑みても、N95マスクが1枚4ドル(※当時のレートで500円弱)とはかなり強気のお値段ですし、医療用マスクが1枚あたり1.5ドル(※当時のレートで200円強)というのも相当にお高めです。

しかも、このお店の本業はHDMIケーブル屋さんですから、本当に医療用のクオリティのマスクを製造できるのかという点に大きな疑問が残ります。

また、もう一つの大きな疑問がありまして、このHDMIケーブル屋さんのアリエクスプレスの商品ページをくまなく探しても、どこにもマスクを販売している商品ページがなく、メッセージで具体的にマスクの価格を伝えてくる割には、買い手にどのように購入させようとしているのかが全く分かりません。

私が「あなたのお店のマスクを購入するにはどうすればいいの?」と再度、問い合わせをしてみると、お店はHDMIケーブルの商品ページのリンクを示し、『この商品ページで、HDMIケーブルを200ドルなり、150ドルなりに買ってくれればちゃんとマスクを発送する』と言ってきました。

しかし、指示されたリンクの先の商品ページのHDMIケーブルは、お値段が切りのいい1ドルとか10ドルではなく、1本4.63ドルという中途半端なお値段でして、HDMIケーブルを何本購入しようとも、お店が言うところの200ドルや150ドルには絶対にならず、私が仮にN95マスクを購入しようとしても、この密売のような方式で、しかもお値段が200ドルちょっきりにならないのであるならば、怪しさだけしかありません。

なぜこのような密売のような事態になるかというと、アリエクスプレスで販売が禁止されている商品をユーザーに購入させる時、こういった別の商品で購入させて受注する、といった方法が違法ですがあります。

私は以前、iPhoneのアンロックSIM、いわゆる「SIM下駄」をアリエクスプレスで購入した際、こういった隠しメニュー方式で購入した経験がありますが、では、どうして使い捨てマスクを隠しメニューにしなければならないのでしょうか?

その答えは、先日、中国の国家主席がマスクを輸出を厳しく規制しているとの報道が出ており(※当時の中国はコロナ感染者がネズミ算のように激増しておりました)、中国国内の医療用マスクを確保べく、海外へ販売することを禁じており、それはアリエクスプレスでも適用されていたと思われます。

もしもマスクをアリエクスプレスで販売していることが発覚すれば、お国の性質上、それは厳しい処罰を受けるようにも思え、下手をすると命まで持って行かれてしまうような気がしますが、そこまでのリスクがありながらも、たった200ドルくらいのお金のために禁止されているマスクを売りたいと思える商魂は、日本人にはなかなか見られないバイタリティだと思います。

このアリエクスプレスのHDMIケーブル屋さん以外にも、衣料品屋さんやジュエリー屋さんなどからマスクの密売をほのめかすメッセージが頻繁に届いていることを鑑みると、あちらのお国ではもう既に使い捨てマスクは潤沢になっている印象があって、下手をするとダブついているのでは?と思ってしまうほど熱心な売り込みが日々来ております。

マスクのお値段は一様にとんでもないボッタクリ価格ですが、この図式は今世紀でおそらく人類が初めて経験する、本当の品不足からの価格高騰だと思われ、考え方によっては、ある意味、かなり貴重な経験をしているような気もする、というお話でした。

2020年3月16日に書かせていただいたものをお読みいただきましたが、当時はたかが使い捨てマスクで、小競り合いだけでなく、窃盗や強盗事件が日本でも起こるほどの超品薄な状態が全国で見られました。

その後、緊急事態宣言が発令され、ステイホーム、お家にいましょうが合言葉となって、むやみやたらに出歩くことが非国民のような扱いを受けるようになると、お家時間中にマスクを自作する方々が大勢出てきたことに加え、相当な非難が巻き起こった、当時の安倍首相が配布したアベノマスクが国民に行き渡った頃から、使い捨てマスクの不足は徐々に解消されました。

今、思い返せば、使い捨てマスクは無敵のアイテムではなく、下手をすると気休め程度にしかならなかったアイテムのような気もしますが、当時はマスクをしなければ即罹患するかのような風潮があって、だからこそ、こういった異常事態になったような気がします。

このマスク騒動の後にも、コロナ禍だからこそ起こった事象が色々ありましたが、コロナが始まった頃から5年が経過した今だからこそ、当時の様子をお伝えしてみた、というお話でした。