
アリエクスプレスを眺めていると、私に対してだけなのかもしれませんが、最近やたらと音楽が録音されているカセットテープがおすすめ商品として出現します。
昭和生まれの人間ならば、レコードやCDからカセットテープへ録音をしたことが誰しもありますが、そういった機材すら今では所有する人間は少なく、そもそもカセットテープを再生するデッキさえも持ち合わせていない人間ばかりの世の中において、なかなか不思議なおすすめ商品に思えます。

ここ数年の間に日本の80年代90年代の音楽が世界的に流行し、その当時の音質で楽しむといった消費行動が見られるようになったことから、日本人ユーザーである私にお勧めをしてきているのかもしれませんが、その商品を見ていると、なかなかの酷さというか、ルール無用な世界が広がっております。
アリエクスプレスで販売されている音楽カセットテープは、その全てが無断で複製されていると思われますが、この構図は実は平成初期の日本でもごくごく普通に見られた光景だったりしまして、当時のドライブインやサービスエリア、ホームセンター等でごくごく普通に販売されておりました。

当時の車はカセットデッキがほぼほぼ標準装備されており、ドライブのお供にはカセットテープが欠かせなかったものの、レコードやCDからカセットに録音するのは面倒な人間は少なからず存在しましたので、こういった権利を無視して作成されたカセットテープの需要はなかなかなものでしたし、単純に儲けがデカいからか、世にはかなり溢れておりました。
その後、日本においても権利の意識が多少芽生え、摘発が少なからずあったからなのか、ただ複製したカセットテープは徐々に姿を消したもの、新たなタイプの音楽カセットが色々と販売されるようになりました。

有名アーティストの名前とラベルはそのままなのに、テープを再生すると実際に歌っているのはそこら辺の素人という、詐欺を上乗りしたようなものがえらく蔓延っておりました。
ただ、当時の私はこういった本人が歌っていない音楽カセットテープを買うのが結構好きで、おそらくはそこらのヤンキーで、声がガサガサなおねえちゃんが中森明菜や中山美穂を一生懸命歌っているテープを聞くのが割と趣味だったりしました。
そんなことを思い出させてくれるのが、アリエクスプレスのカセットテープでして、あの頃の酷い商売とあまり変わらないような気がしてしまうのです。

例えば、上のカセットテープはラベルは斉藤由貴と書かれているのに、商品名には岩尾英子という名前が書かれ、これは本人が歌っているのか否かがはっきりしない、かつての私が好きだった類かもしれないものとなっております。
ただし、お値段が4千円弱とボッタクリレベルにも思え、仮にご本人が歌っていると何の面白みも無いので、買うのはためらってしまいます。

お次は誰もが知っているキングオブポップですが、ラベルに書かれている中国語があの頃の怪しさを浮き彫りにしてくれているような気がしてしまいます。
マイケルだと思って再生したら、日本人のおっさんらしき人物が演歌口調でBADを歌い出した、私が所有していたあの時のカセットテープと同じなのかも、と思ってしまいます。

そのパターンで言いますと、あの頃のドライブインにはほぼほぼ偽物しかなかった山口百恵のカセットテープがアリエクスプレスにも存在し、これにも中国語がふんだんに書かれているので、聞いてみたらどこぞのおばちゃんが歌ういい日旅立ちが聞けるかもしれません。
ちなみにアリエクスプレスの音楽カセットテープには本人が歌唱していると書かれているものの、本当か嘘かは分からず、仮に本人が歌っていたら権利的にはアウトですので、買わずに見るだけにしておいた方が良いのは間違いのですが、民度の低かったかつての日本を思い出させてくれるカセットテープがアリエクスプレスにあった、というお話でした。