先日、インターネットニュースを眺めておりますと、アリエクスプレスが初めてグローバルブランドアンバサダーの契約を行ったそうで、その契約の人物は2000年代のサッカー界の英雄であるデビッド・ベッカムだとのこと。
アリエクスプレスにしては、という表現は失礼にあたるような気がするものの、サッカーに疎い私のような人間でも知っている超有名選手を、アンバサダーという名の広告塔にしたのはなかなか凄い事のように思うのですが、アリエクスプレスで販売している商品を考えると、それでいいの?とベッカムに問いたくもなります。
この図式で思い出したのが、昭和の時代が終わりつつある頃に販売されたファミリー・エースという商品と輪島功一氏です。
ファミリー・エースは、任天堂のファミコンが国民的な人気を博す直前あたりに販売されたファミコンソフト専用のコピー機で、ファミコンのゲームを扱う雑誌の巻末広告などで公然と販売する告知がなされておりました。
その商品のアンバサダーとしてなのかは不明なものの、広告塔として祭り上げられているのがボクシングのWBA・WBCウェルター級チャンピオンを3度も獲得した輪島功一氏です。
PCなどのソフトで考えるのならば、自らが購入したソフトのバックアップを自らのために取っておくこと自体は違法ではなく、ソフトのバックアップコピーは購入した人間が有する権利です。
しかし、このファミリー・エースの広告は、当時大人気だった動物であるラッコが『ギャハハハハ・・・』と奇声を発しながら楽しそうにファミコンソフトをダビングしまくり、
その光景を木の上から見たコアラが『ウヒャー・・・』とうらやましがり、
複製された大量のファミコンソフトを前にしたパンダが、ファミコンで遊びながら『出たよ!』と驚く、違法性の極めて高い複製が行われていることを示す構図となっております。
挙句の果てには『友達に差を付けよう』と広告の読み手である子供たちを煽り、ダメ押しの売り口上として『ハイ一丁あがり!今日から友達のゲームソフトも僕のもの・・・』と強調し、すご~い人気のファミカセ用ダビングマシンを販売しようとの努力が見られます。
また、この一文の中の『友達のソフトも僕のもの』との言葉があることで、この商品が真っ黒であることが本当は確定してしまうのですが、見えないくらいの小さな文字で『ダビングをして他人への販売は法律で禁じられております』とも書かれており、お金が発生しなければオールOKのスタンスを絶対に崩しません。
当時は民度がまだまだ低めだった日本であったものの、当時でも決して褒められたものではなく、むしろ貶されても仕方のない素性の商品でしたが、それでも、日本ボクシング界の偉大なチャンピオンである輪島功一氏は、このファミリー・エースに対して『僕の子供も愛用』との一言を添えております。
こういったゲームソフトのコピーを大っぴらに告白した他の有名人はというと、今回の都知事選に立候補する女性の元参議院議員くらいしか思い浮かばず、それくらいレアな事柄が雑誌の広告に掲載されている世の中がかつての日本にはありました。
アリエクスプレスには勝手に製造されたと思われるデビッド・ベッカムグッズが今でも山のように販売されておりますが、当のデビッド・ベッカム氏はアンバサダーとしてにこやかにアリエクスプレスを積極的に宣伝しております。
コピーしている商品は違えど、図式的にはかつてのファミリー・エースと同じようなことになっていると個人的には感じている、アリエクスプレスのアンバサダー就任のお話でした。