送料無料が当たり前のアリエクスプレスがコロナ禍の時に日本向けだけが有料配送になった時の話

アリエクスプレスの大きな魅力の一つに、どんな安価な商品でも送料無料、というものがあると思います。

ただし、この送料無料は、日本のフリマサイトのように商品価格の中に送料分を組み込まれているのと同様でして、例えば、300円で販売されている商品の内訳は、『原価100円+送料100円+お店の儲けが100円の計300円』といった価格設定がなされて販売されております。

そして、コロナ前のアリエクスプレスでのは郵便がメインで、中国からの国際郵便の運賃は異常なまでに安価でして、この郵便で発送することこそが送料無料で販売できる最大の原動力でした。

しかし、新型コロナウイルスが原因で安価な運賃を実現していた物流網が崩壊し、その余波はアリエクスプレスの送料無料にまでも波及してしまいました。

現在のアリエクスプレスは大半の商品が送料無料、商品によっては1500円以上の購入で送料無料だけでなく、1週間も掛からずに日本のユーザー宅へ素早く届けられる配送方法が一般的となり、日本のECサイトで購入するよりも早く届いてしまうこともしばしばですが、それとは真逆だった頃のことを改めてお伝えさせていただきます。

では、新型コロナウイルスの影響で全世界がロックアウト状態だったのがやや脱しつつあるものの、世界中で感染者が加速度的に増加していた2020年7月1日に時を戻してご覧ください。

新型コロナウイルスは、今までの環境や様々な生活様式を一変させる出来事となりましたが、海外から届けられる荷物を取り巻く環境も以前とは大きく様変わりしました。

コロナの影響から各国とも渡航を禁止する政策を実行したため、世界中の国々が鎖国状態になりましたが、コロナウイルスを外から持ち込ませないためには仕方のない政策であり、日本国内においても有効な手段であったと思われます。

しかし、国と国への行き来ができないということは、定期的な航路が欠航になってしまうことにも繋がり、これは人の往来ができなくなるだけではなく、貨物の輸送にも影響が出てしまいます。

アリエクスプレスで購入して中国から日本へ向かう荷物の多くは、日本へのチャーター機に搭載されて運ばれるわけではなく、あくまでも日本と中国を結ぶ定期航路の航空便で、荷室に空きがある時にだけ積載されて運ばれてきました。

深センや広州、北京などから発送された荷物が比較的時間が掛からずに日本へ届いていたのは、定期便が多い割に乗降客がそこまで多くないために荷室が空きやすく、だからこそ、時にはたったの4日間でユーザー宅へ届いてしまうこともありました。

しかし、コロナがきっかけで定期航路がどんどんと欠航となってしまえば、荷物を積み込む機会自体が失われるのですから、中国から日本へ向かうはずの荷物はそのままとどまり続けることとなり、なかなか届かなくなります。

そんな状況を打破しようと、アリエクスプレスの親会社であるAlibaba傘下の物流会社・CAINIAOが世界各国への物流経路を再構築して、ユーザーの元へ荷物がなんとか届けられるようにしました。

しかし、新たな物流経路を確保したということは輸送コストが増大するわけで、配送運賃は当然値上がりをし、場合によっては従来から3倍以上も運賃が値上がりした例もございます。

アリエクスプレスの大きなウリの一つである『送料無料』は、お店が販売する価格に送料が転嫁されており、例えば、送料無料200円で販売されている商品の大まかな内訳は、『商品原価+配送運賃+お店の儲け=200円』という図式となります。

仮に、コロナ前の配送運賃が50円で、コロナ以後は3倍に値上がりして150円になったとすれば、上記の式で送料無料200円で販売することはできず、お店は値上げせざるを得ません。

コロナ禍になってから、アリエクスプレスの商品価格は全体的に値上がりしていて、この背景は運賃が大いに関係していると理解できるのですが、最近のアリエクスプレスでは、日本向けだけが送料無料でなくなっていたり、日本向けに販売しない事例がかなり増えております。

なぜ、日本向けだけが送料無料ではなくなってしまっているのかというと、それはユーザーの比率が関係しているように思われ、輸送する荷物の量が大いに関係していると思われます。

例えば、日本とヨーロッパの国々とのユーザー数を比較すると、ヨーロッパは地続きになっているのでひとくくりにできる分、ユーザー数は圧倒的に多いのは間違いなく、ひいては荷物の輸送量も日本向けの何倍も多いと思われます。

また、中国から陸路だけでたどり着くヨーロッパと、絶対に海を越えなければならない日本とでは、運賃の価格差があるのは当然で、しかも物量の多いヨーロッパはアリエクスプレスの自前の倉庫をいくつも持っていることもあり、運賃は日本向けよりもかなりお安いと言われております。

アリエクスプレスで販売されている商品の価格は米ドルで設定されており、その米ドル価格を日本人ならばその日の為替レートで換算された日本円で購入することになりますが、ここで重要なのは、設定された米ドル価格は不変であることでして、仮に送料無料3ドルで販売される商品は、日本人もアメリカ人もアフリカ人も誰もが3ドルで購入することなのです。

その3ドルの内訳は、先程申し上げた(商品原価+配送運賃+お店の儲け)=3ドルで、商品原価とお店の儲けは一定ですが、配送運賃は発送する国々によって大きく異なることになり、かつ、日本向け荷物の運賃が大幅に値上がりをしております。

となると、送料無料3ドルで販売するお店は、『日本人に買われると送料を多く支払うことになって儲けが少なくなる。だったら、日本人には売らず、日本以外の国々だけを送料無料にしよう』と考えてもなんらおかしくありません。

その結果、日本人ユーザーは購入できない、あるいは、日本人ユーザーが購入したければ別途で送料を負担しなければならない商品が続出している現状があるような気がします。

ちなみに、私がこれまで購入した商品の履歴から商品ページを辿り、現在、日本向けでも送料無料の商品がどれくらいあるのかを調べてみると、およそ7割の商品が、日本へは送料無料ではなく別途で送料がかかる、あるいは、日本向けは購入することができないようになっておりました。

うがった見方をすれば日本人のみを排除しているようにも見えてしまうのですが、この光景を目の当たりにするようになったのはコロナで運賃が値上がりしてからの事なので、配送運賃の問題が引き金になったのは間違いありません。

現状では日本人ユーザーが送料無料で購入できる商品が3割程度しかないとも言えるアリエクスプレスですが、その3割程度の商品であっても、意外と購入できるものが個人的にはあったりするものの、以前の買い物とはかなり異なる事態になっているもの確かです。

これを打破するのは、新たな輸送ルートが確保されるか、元の世界のように航空便の定期航路が再開されるのかしかなさそうですが、送料無料を望む日本人ユーザーにはなかなか厳しい現状の配送状況のお話でした。

2020年7月1日に書かせていただいたものをお読みいただきました。

文中にもありましたが、当時のアリエクスプレスの配送方法は、SAL便と呼ばれる、旅客機に空きスペースがあった時にだけ日本まで届けられる配送方法がメインでしたので、コロナで定期航路が次々と閉鎖されると、発送された荷物は中国の空港に置き去りとなり、当然、日本へは全然届かなくなって、発送から3か月が経過してようやく届いた、なんてことが平気で起こりました。

事態を重く見たアリエクスプレスは新たな物流網を確立したのですが、その反動は運賃コストが跳ね上がり、文中のようなことが発生してしまいました。

また、新たな物流網で日本向けに発送されたとしても船便しか輸送手段がなく、船便だからこそ、積載量は多いものの積み込みが完了するまでにかなりの時間が掛かり、ひいては日本に届くまでにも時間が掛かり、日本の郵便局の仕分けもコロナの影響で時間が掛かりと、結局、届くまでには1カ月くらいの時間を要しておりましたが、それでも届くだけマシでした。

ただ、このコロナで物流網がおかしくなったからこそ、現在の素早い物流網に生まれ変われたきっかけにもなったような気がするのですが、当時は届くまで3か月間くらいの時間が掛かってしまうことが本当に起こりました。

今の世は、新型コロナウイルスなんてなかったのでは?と思えるほどコロナが風化して過去の物になってしまい、アリエクスプレスから届く荷物が3か月はおろか、1カ月だって待たされることが一切なくなりましたが、ほんの5年ほど前には異常事態だった時代があった、というお話でした。