
アリエクスプレスには色々な絵柄、図柄のTシャツが大量に販売されておりますが、これは元となる絵柄や図柄さえあれば、勝手にプリントしてしまうからこそ、起こる事象となります。
アニメやスポーツはもとより、どんな絵柄や図柄でも製造してしまうアリエクスプレスのTシャツですが、80年代から90年代にかけて流通していたTシャツの中には、現在、ビンテージTシャツとして、えらく高価なお値段で取引されるものがあったりする世の中ですので、この年代をピンスポットで製造しているTシャツを最近やたらと目にします。
その中で、おそらく価値なんぞ一切なさそうなのに、やたらと充実しているTシャツのカテゴリーがありまして、それは、80年代の日本のプロレスをモチーフにしたTシャツです。

80年代の中盤くらいまで、日本においてのプロレスの立ち位置は神聖な競技であり、タイトルマッチともなると、試合前に国歌斉唱が必ず行われてコミッショナーが開会を宣言する、なんてことがボクシングなどと同様に必ず行われておりました。
ただ、そんな厳格さがありつつも、場外乱闘が頻繁に起こり、鉄柱に相手をぶつけたり、椅子やテーブルで殴打したり、5秒以内ならば隠し持っていたフォークで頭を刺すことも、首を絞めることすらも立派な技になったりと、あれっと思うことは多々ありましたが、日本国民の誰もがそういう競技なんだと自覚し、リアルファイトだと信じて熱狂しておりました。
そんなおおらかな時代のプロレスをモチーフにしたTシャツが、アリエクスプレスにはなぜか異常な種類で販売されていて、その中にはなぜその図柄にしたのかを聞きたくなるものもあったりします。

その昔、タイガーマスクというレスラーは大人気を博し、その正体が誰なのかと当時は最大のミステリーとされていたのですが、そんな秘密をつまびらかにしているTシャツがアリエクスプレスでは販売されております。
現在では公然の事実となっていることですが、名前は勿論の事、出身地まで記載されている謎の覆面レスラーのTシャツというのはなかなか珍しく、どんな意図で製作したのかを聞いてみたくなります。

また、タイガーマスクにはライバルが何人か設定されており、中でもダイナマイト・キッドは名勝負を繰り広げたとして当時は相当な人気でしたが、二人のタイトルマッチをモチーフにしたTシャツも販売されております。
このTシャツの図柄は非常に微妙であり、当時はこういったヘタウマというか、下手の要素が強いイラストがグッズにやたらと使用されていたのですが、このTシャツを製造した中国人はその事実を知っているのかを聞きたくなるほど、やたらと懐かしさを感じる商品だったりします。

タイガーマスクの後も色々な謎のレスラーが登場しましたが、タイガーマスクに近い規模でブレイクしたのはザ・グレート・ムタだと思われ、そのTシャツもアリエクスプレスには販売されております。
ただし、このTシャツに関しては情報がごちゃまぜになっており、スペース・ローン・ウルフと売り出された後、謎のレスラー・ザ・グレート・ムタに変貌するのですが、その様をアリエクスプレス特有の翻訳がなされ、宇宙ローンウルフという謎の言葉がプリントされております。
また、スペース・ローン・ウルフとグレート・ムタは別物というギミックがあったのですが、タイガーマスク同様、知っていても言ってはならないことをバラしてしまっているのも公然の事実とはいえ、なかなか斬新です。

アリエクスプレスには他にもなぜ製造されているのか分からない、なぜ、その図柄にしたのか需要なんて一切なさそうなプロレスTシャツがかなり販売されており、おそらく覚えている人がかなり少ないであろう、バッドニュース・アレンやデイビーボーイ・スミスのTシャツを見た時、個人的には感動すら覚えました。
しかし、そんなことに興味がある人間の方が少数派でしょうし、結局のところ、需要はかなり少ないのでしょうが、80年代90年代にプロレスを熱心に見ていた人間には相当に興味深い商品がたくさんあった、というお話でした。